「基本の原価管理術」(13の術)建設工事の原価は財務では管理できない

2018.05.12

財務管理を行っていない会社はないでしょう。
しかし、税理士任せという会社が多いことも事実です。
そのような会社は、工事別の原価管理をきちんと行っていない場合が多いのです。
 
と、このようなことを言うと、「いや、我が社はきちんと工事別の管理をしている」と反論されると思います。
たしかに、現場を預かる責任者は自分の工事の原価を把握しているでしょう。
さすがに、自分の現場で赤字を出すわけにはいかないと思っているでしょうから。
 
しかし、会社に、各工事の原価を統一的に管理している部門あるいは責任者がいて、各工事の原価を総合的に管理していますか?
「それは経理がやっているよ」と答える会社が多いのですが、経理の責任者の多くは現場を管理した経験がありません。
それで本当に原価管理が分かるのでしょうか。
 
実際、建設財務ソフトだけで原価管理を行っている会社が多くあります。
このような財務ソフトには建設原価の管理を行う機能が備わっているので建設会社の決算に使えることは事実です。
しかし、大きな問題があります。財務管理は正確さが大事です。
その分、原価の把握が後手になります。
不確かなデータを確定するわけにはいかないからです。
たしかに法律では決算の時に工事別原価が判れば良いとなっていますが、それで良いのでしょうか。
 
工事別の原価管理でいちばん大事なことは、タイムリーな原価の把握です。
最終原価を予測するためには、多少正確さを犠牲にしてでも現状を早く把握しておく必要があります。
「早く、しかも正確に」は理想ですが、お互い矛盾する要素です。
どちらかを優先するしかありません。
 
前述したとおり、財務管理は正確さが命です。ここは譲れません。
しかし、そのために工事原価の把握を遅らせたのでは本末転倒です。
建設会社の利益は現場が作っているのですから。
 
正しい方法は、原価管理を優先し、それから確定した原価のみを財務へ送り、しかるのち、財務を確定するという方法です。
「建設工事の原価を財務で管理することはできない」のです。
  
財務管理を税理士に任せたとしても、原価管理まで任せてはいけません。
まして、財務側の事情から「このような原価にせよ」と指示することは最悪です。
現場管理を経験した税理士さんなら良いのでしょうが・・