第8回:国の政策には頼れない
2012.02.16
建設企業の45%が「地域や業界の需要が長期的に本格回復する見込みはない」との悲観的見方をしている。最近の帝国データバンクの調査結果である。
その一方で、中小企業の倒産件数は大幅に減った。だが、これは誰もが分かっているように、「金融円滑化法」に頼ったつかの間の平穏である。
この2つの事象が示している建設産業の近未来の姿は明白である。
今は、「金融円滑化法」という魔法(マジック?)によって一時的に平穏ではあるが、その魔法が解けた先には、吹雪の荒野が待っている。多くの経営者はそのことが分かっている。
しかし、「有効な手が・・」という無力感と「なんとかしなくちゃ」という焦りに取り込まれつつあるのが現状であろう。
「金融円滑化法」によって借金返済を棚上げし、一息ついた企業は多い。
しかし、その間に経営状況を本格的に改善できた企業は少ない。多くは、単に「時間稼ぎ」ならぬ「時間空費」していたに過ぎない。
また、景気がそれまでに回復する見通しは立たない。
ゆえに、本法案の期限がくれば倒産する企業が急増する。
だから、このことを恐れた政府は同法案を来年3月まで再延長することにした。
だが、その先の再々延長があるかどうかは分からない。
それどころか、今の政権自体がそんなに持ちそうにない。
それを見越してか、各省庁の官僚たちの動きは鈍い。
個々の企業は、もはや国の政策に頼ることは出来ないと覚悟を決めたほうがよい。
借金返済を棚上げしている企業は、楽観的希望は捨て、1年内に今の経営状態からの脱皮に本気で取り組まなくてはならない。
それでも国の政策に期待している企業もあるかもしれないが、抜本対策への期待は捨てたほうがよい。
この先の政府の対策は、“みみっちい”ものでしかない。
国交省が発表した対策を見てみれば分かる。
例えば、
・国交省が無料の経営相談を1回から2回に増やす
・政府は、成長分野への事業転換や転廃業を支援する
・耐震改修、エコ建築、リフォームの推進を促す
これが中小企業対策の名に値する政策なのか?
コメントする言葉も無い。
肝心の建設市場自体、「公共施設の更新費用が自治体の大きな負担になっている」との指摘もあり、比較的堅調と言われてきた耐震補強などのリニューアル市場も雲行きが怪しくなってきた。
これからは、東北大震災の復興事業や原発事故の処理へ予算は優先的に配分されていく。
だが、その恩恵を一番受けるのは大手である。
既に大手の受注高は前年を15%も上回る勢いである。
その一方で、東北以外の県に対する予算配分は相当に厳しくなる。
2月8日に成立した第4次補正予算を見ても公共事業への配分はほとんど無い。
地方交付税にしてもわずか3600億円にすぎない。
災害復旧の恩恵というと言い過ぎだが、その恩恵配分がない地方の公共事業費は減り続けていく。
「それじゃ地方経済は崩壊する」という怒りの声はあろうが、今の政府の耳には届かない。
おそらく、野田首相は自身の延命は考えていない。
首相の頭の中は、消費税増税法案を通すことで一杯である。
首相が、地域政党の人気の高さとか、内閣支持率の低下などに無頓着なのを見れば、その心中は察しがつく。
しかし、今のままでは増税法案は成立しない。
そこで最後の手を考えていると思われる。
それは、法案成立後の解散を約束して自民党と手打ちをすることである。
すでに水面下では動いていると思われる。
となると、キーを持っているのは自民党ということになる。
増税は野田政権にさせておいて、その後に政権を取るほうが楽だから、これは自民党にとって悪い話ではない。
だが、こちらの腰もふらついている。
民主党同様、選挙に自信が持てなくなっているのである。
谷垣総裁は、口を開けば「解散・総選挙」を連呼するが、自民党への国民の支持率は一向に上昇しない。
地域政党の国政参戦が現実化してきた現在、選挙におびえているのは民主党の議員だけではない。
自民党議員も同様なのである。
こんな状況では政策に期待など持てないことは、経営者なら肌身に感じられているであろう。
ならば「どうするか」を考え、実行しなければならない。
次回は、そのことを論じてみたい。
追記
民間市場はリフォームの伸びで維持されているが、今後は競争の激化が予想される。
リフォームは、ユーザーにとって価格の妥当性の判断が難しい「グレーゾーン市場」である。
そのことは、仕掛ける側の建設会社から見れば、営業的にも施工的にも新築より工夫の余地が大きいことを意味している。
このリフォーム営業については、メルマガのほうで解説する予定である。
ご興味がある方は、そちらをお読みいただきたい。
その一方で、中小企業の倒産件数は大幅に減った。だが、これは誰もが分かっているように、「金融円滑化法」に頼ったつかの間の平穏である。
この2つの事象が示している建設産業の近未来の姿は明白である。
今は、「金融円滑化法」という魔法(マジック?)によって一時的に平穏ではあるが、その魔法が解けた先には、吹雪の荒野が待っている。多くの経営者はそのことが分かっている。
しかし、「有効な手が・・」という無力感と「なんとかしなくちゃ」という焦りに取り込まれつつあるのが現状であろう。
「金融円滑化法」によって借金返済を棚上げし、一息ついた企業は多い。
しかし、その間に経営状況を本格的に改善できた企業は少ない。多くは、単に「時間稼ぎ」ならぬ「時間空費」していたに過ぎない。
また、景気がそれまでに回復する見通しは立たない。
ゆえに、本法案の期限がくれば倒産する企業が急増する。
だから、このことを恐れた政府は同法案を来年3月まで再延長することにした。
だが、その先の再々延長があるかどうかは分からない。
それどころか、今の政権自体がそんなに持ちそうにない。
それを見越してか、各省庁の官僚たちの動きは鈍い。
個々の企業は、もはや国の政策に頼ることは出来ないと覚悟を決めたほうがよい。
借金返済を棚上げしている企業は、楽観的希望は捨て、1年内に今の経営状態からの脱皮に本気で取り組まなくてはならない。
それでも国の政策に期待している企業もあるかもしれないが、抜本対策への期待は捨てたほうがよい。
この先の政府の対策は、“みみっちい”ものでしかない。
国交省が発表した対策を見てみれば分かる。
例えば、
・国交省が無料の経営相談を1回から2回に増やす
・政府は、成長分野への事業転換や転廃業を支援する
・耐震改修、エコ建築、リフォームの推進を促す
これが中小企業対策の名に値する政策なのか?
コメントする言葉も無い。
肝心の建設市場自体、「公共施設の更新費用が自治体の大きな負担になっている」との指摘もあり、比較的堅調と言われてきた耐震補強などのリニューアル市場も雲行きが怪しくなってきた。
これからは、東北大震災の復興事業や原発事故の処理へ予算は優先的に配分されていく。
だが、その恩恵を一番受けるのは大手である。
既に大手の受注高は前年を15%も上回る勢いである。
その一方で、東北以外の県に対する予算配分は相当に厳しくなる。
2月8日に成立した第4次補正予算を見ても公共事業への配分はほとんど無い。
地方交付税にしてもわずか3600億円にすぎない。
災害復旧の恩恵というと言い過ぎだが、その恩恵配分がない地方の公共事業費は減り続けていく。
「それじゃ地方経済は崩壊する」という怒りの声はあろうが、今の政府の耳には届かない。
おそらく、野田首相は自身の延命は考えていない。
首相の頭の中は、消費税増税法案を通すことで一杯である。
首相が、地域政党の人気の高さとか、内閣支持率の低下などに無頓着なのを見れば、その心中は察しがつく。
しかし、今のままでは増税法案は成立しない。
そこで最後の手を考えていると思われる。
それは、法案成立後の解散を約束して自民党と手打ちをすることである。
すでに水面下では動いていると思われる。
となると、キーを持っているのは自民党ということになる。
増税は野田政権にさせておいて、その後に政権を取るほうが楽だから、これは自民党にとって悪い話ではない。
だが、こちらの腰もふらついている。
民主党同様、選挙に自信が持てなくなっているのである。
谷垣総裁は、口を開けば「解散・総選挙」を連呼するが、自民党への国民の支持率は一向に上昇しない。
地域政党の国政参戦が現実化してきた現在、選挙におびえているのは民主党の議員だけではない。
自民党議員も同様なのである。
こんな状況では政策に期待など持てないことは、経営者なら肌身に感じられているであろう。
ならば「どうするか」を考え、実行しなければならない。
次回は、そのことを論じてみたい。
追記
民間市場はリフォームの伸びで維持されているが、今後は競争の激化が予想される。
リフォームは、ユーザーにとって価格の妥当性の判断が難しい「グレーゾーン市場」である。
そのことは、仕掛ける側の建設会社から見れば、営業的にも施工的にも新築より工夫の余地が大きいことを意味している。
このリフォーム営業については、メルマガのほうで解説する予定である。
ご興味がある方は、そちらをお読みいただきたい。