第5回:地方経済のゆくえ

2010.10.30

仕事柄、地方を回ることが多い。
大都市は東京とあまり変わらないが、中小の地方都市を訪れると、判で押したように同じような風景にぶつかる。
駅前の一等地に廃墟のような姿をさらす古いビル、開いている店を探すのに苦労するアーケード型の商店街。
不謹慎な言い方だが、B級のホラー映画の中に入ってしまったような錯覚すら覚えて、めまいがしてくる。

やっと探したレトロな喫茶店でコーヒーを飲みながら、ウェイトレスと話をする。
「ここの駅も無人駅になるかもしれない」と心配そう。
延々と古き良き時代の話が続く。人通りの絶えた表通りとあまりにも対照的な昔話に全く実感が湧かない。

私は『ウェイトレス』と言ったが、私の母と同年代とおぼしきおばあちゃん(失礼!)。
何やら、我が家でコーヒーを飲みながら母の昔話を聞いているような気分になる。

タクシーに乗って目的地に向かう。しばらく走ると、たんぼの中に巨大戦艦のようなショッピングモールが出現する。
「イオン○○」か「○○ヨーカドー」あるいは「○○タウン」と、どこの地方に行っても、これら数種類の巨艦店に出くわす。

法事で戻った故郷も全く同じ風景だった。

伝統ある城下町だった町はさびれ果て、死んだようである。
しかし、田んぼの中には、「イオン○○」がその巨体を現す。
親類縁者は、町の衰退を嘆きながら、「イオン○○は便利でえ~わ」、「1日おっても退屈せんでな」と屈託なく話す。
そういえば、以前、こんなことがあった。
とある地方都市の「商店街活性化プロジェクト」にアドバイザーとして参加したときのことだ。
コンビニや大型店舗に対抗してどんな策が打てるか、なかなかに熱い議論が盛り上がった。
若い人が多かったせいもあり、「これなら・・」と思い始めた時である。用意していた飲み物がなくなって、誰からともなく声が上がった。

「だれか、飲み物を買ってこいよ」。
「え~?、○○屋はもう閉まっているぜ!」
「駅前のコンビニが開いているよ」
これは笑い話ではない。実話である。

建設産業の衰退にも似たような要素がある。
上記のような話のネタは尽きないからだ。
そこに気が付かないと、産業自体が駅前商店街になってしまう。
日本国内の産業構造および人々の生活スタイルが劇的に変わらない限り、インフラ整備という建設市場はピークを過ぎた「峠の下り坂」なのである。

では、地方経済はこのまま衰退し続けるのであろうか。
全てではないが、8割の地方は衰退し続けると言えよう。
要するに、8:2の理論である。
経済の源は人口にあるから、2004年をピークに人口が下降に転じた日本経済の規模が減少していくのは止めようがない。

しかし、一様に衰退するわけではない。そ
の様子はまだら模様になっていくであろう。
ということは、逆に伸びる地方もあるということである。

では、どこにその違いがあるのであろうか。
キーワードは『画一化からの脱却』である。
「そんなことは分かっている」と言われるかもしれないが、では、どうやって脱却するかを聞かせて欲しい。
その策を話せて、かつ実行できる人だけが「分かっている」のであり、「分かっている」と言うだけの人は、何も分かってはいないのである。


画一化からの脱却の話は難しい。
例えば、この紙上で「○○だ」と言い、みながそれを実行したら、それが画一化になってしまう。
つまり、一律の処方箋など作れない。
あえて言えるのは「人口を増やす施策」である。
えげつない言い方をすれば、「他の町から人を奪い取る施策」である。

一企業としては、「人を引き付ける企業」になることである。
この話は次回に。