第28回:白雪姫
2012.03.05
本道場の第1回の稽古は「うさぎと亀」じゃったな。
憶(おぼ)えておるかな?
誰もが知っておる童話を題材に、
よく考えてみれば「おかしい」ところ、
「なんで?」という疑問が湧くところなどを取り出し、
「こんな風に考えられるな」とか、
「こう考えるほうが自然だよ」とか、
考えを縦横無尽(じゅうおうむじん)に投げ飛ばし、
固く凝り固まってしまった思考を柔らかくする道場を開校したんじゃ。
その後、題材の幅をいろいろ広げてきたんじゃが、ここいらで、また童話の世界を題材にした稽古をしてみることにする。
今度は、西洋の童話を取り上げるとするか。
まずは、そうじゃな、「白雪姫」でいこうかのう。
【白雪姫】
ストーリーは、いまさら説明するまでもないじゃろう。
グリム童話では、「シンデレラ」と並んで横綱級の話じゃからな。
しかし、このままでは本道場の稽古にならん。
そこで、考えてみてくれ。
諸君が、白雪姫の話に触れたのは何歳の時かな?
そこの君、どうじゃな。
「4歳?」
そこの君は?
「6歳?」
まあ良い。要するに幼児の時じゃな。
知識の媒体は、おそらく「絵本」じゃろう。
では、一番印象に残っているシーンは、どんな場面じゃな?
①毒りんごを食べる
②魔法のかがみに「世界で一番美しいのは・・」と問いかける
③七人の小人にかくまわれる
④継母(ままはは)のお妃に命を狙われる
⑤白雪姫に一目ぼれする王子様の登場
⑥王子様の口づけで生き返る
⑦王子様との幸せな結婚式
こんなところかな。
では質問する。
上記に上げた7つのシーンのうち、初版本でもその通りだったのは幾つあるかな。
なに、全部じゃと!
「渇!」 ・・・久しぶりじゃな。
それでは稽古にならんじゃろう。
ここまで稽古して、そんな寝言を言うようでは、破門じゃぞ。
ちっとは考えてみよ。
正解は・・・たったの2つじゃ。
①の「毒りんご」と、②の「魔法のかがみ」以外は、全部、後で書き換えられたんじゃよ。
では、初版本では、どうなっていたかじゃが、
こうなっておった。
③七人の小人
→ 七人の「人殺し」
④継母(ままはは)
→ 実母
⑤白雪姫に一目ぼれする王子様
→ 「死体愛好家」の王子様
⑥王子様からの口づけで生き返る
→ 家来に棺を運ばせる途中、木につまづき棺が揺れた拍子に、のどに詰まっていたリンゴのかけらを吐き出し、白雪姫は生き返る。
要するに、りんごのかけらで窒息し、仮死状態になっておっただけなんじゃ。
⑦王子様との幸せな結婚式
→ 白雪姫は、継母(初版本では実母)への復讐を果たす。
具体的に言うと、「真っ赤に焼けた鉄の靴を履かせ、死ぬまで踊らせた」
どうじゃな。
初版本のシーンで話を再構築してみると、とても童話にはならんじゃろう。
実の母が娘を殺そうとして、逆に復讐されるというオチじゃからな。
さらに、人殺しの七人にかくまわれた白雪姫の森での生活って・・
想像できるかのう。
極めつけは、王子が「死体愛好家」だったと言うのじゃぞ。
(死体と思って)譲り受けた白雪姫の遺体を、どうするつもりじゃったのか。
そこの君、にやにやしとるが、よからぬ妄想をしとるな。
「渇!」と言いたいが、初版本の狙いは、そこにあったのかもしれんな。
ところで、正解ではあるが、
①毒りんごを食べる
②魔法のかがみに「世界で一番美しいのは・・」と問いかける
シーンも、そうすんなりとした話ではないのじゃ。
まず、毒りんごだが、
白雪姫の命を狙うお妃は、最初は違う手段をとったんじゃ。
最初は、腰ひもで白雪姫ののどを締め、窒息させたが、小人たちが蘇生させた。
次は、毒を塗った櫛(くし)で白雪姫の頭を刺したが、これも小人たちが蘇生させた。
3回目に、毒りんごでやっと白雪姫を殺せた(仮死だったのであるが)。
話がどんどんおぞましくなるが、童話となった話より、話の整合性は取れていると思わんかな。
王子様の口づけで生き返るなんてウソ臭い話より、仮死状態だったのが、のどのつかえが取れて息を吹き返した、の話のほうが、本当臭いではないか。
また、「森に住む小人たち」より「森に隠れていた人殺したち」のほうがあり得る話じゃろう。
最後に、
魔法のかがみが「世界で一番美しいのは白雪姫です」と答えて、王妃は殺意を抱くわけじゃが、
この時の白雪姫の年齢は7歳となっておる。
王妃の年齢は定かではないが、「7歳の子に嫉妬するか?」って思うんじゃがな。
相手は、小学2年生じゃぞ。
どうかな?
それと、毒りんごを食べたのは10歳の時じゃから、
王子は10歳の女の子の遺体に興味を示したということになる。
死体愛好家であった王子は、同時にロリコンでもあったんじゃなあ。
童話の世界なんぞ、吹き飛んでしまったな!
ちなみに、ワシが白雪姫のイメージを強烈に植え付けられたのは、ディズニーのアニメ映画じゃ。
この映画で、上記の残酷シーンやおぞましい想像を掻き立てる場面は、すべて綺麗に変えられたんじゃ。
王子様の口づけのようにな。
ところで、この映画の製作は、1937年となっておる。
ワシの生まれる遥か(?)前じゃ。
と言うことは、ワシが子供の時に見た映画は、リバイバル上映じゃったんじゃ。
これが一番驚いたことじゃ。
※画像の出典は、「Yahoo!検索」より