第24回:アインシュタインの悲劇(前編)

2010.10.31


さて、今回の稽古は「相対性理論」の続きじゃ。
なに? 疲れた、だと。
「渇!」  さあ・・・ 道場に来い!


【アインシュタインという人】

下の2枚の写真を見てくれ。
まさに、年月が刻む人の顔の変遷じゃな。



そして、以下は、17歳の時の写真じゃ。
論評は無い!
各自、何を思うか・・・自分の胸に問うて欲しい。


さて、しばし、科学講義に耳を貸してもらおうかの。
退屈じゃったら、寝てても、え~ぞ。




【相対性理論の誕生】

アインシュタインは、1905年、26歳で特殊相対性理論を発表。
1916年には、37歳で一般相対性理論を発表。
相対性理論の完成じゃ。
「この世界は、空間と運動からなる四次元時空」という彼の大胆な仮説は、
当時の人々には受け入れがたい思考であった。

しかし、その後いくつかの実験で彼の理論が実証されるに従い、
科学者の域を超え、時代の寵児(ちょううじ)となった。
今日に至るまで、これほど一般大衆を熱狂させた科学者はおらんじゃろう。

さて、最初の稽古じゃぞ。
「これほど一般大衆に受けた理由はなんじゃ」という問題じゃ。

そこの君、答えてくれんかな。

ふむふむ、そうじゃな。60点はあげようかの。

まず上げられるのが、
あの親しみやすい風貌。そして、ユーモア溢れる言動などの人間性じゃな。
2年前にノーベル賞を受賞した、益川敏英さんにも通じる面白さ・・じゃな。
共通しているのは、学者バカというか、
一切の権力におもねる事のない「すがすがしさ」ではないかと思うのじゃ。

次に、
かの理論が、壮大な宇宙の姿をわれわれに明快に見せてくれたからではないかな。
まるで劇場で映画を見るようにじゃ。
宇宙には「ブラックホール」という場所があることを、今では、誰もが信じておるじゃろ。
(実際に見た者はおらんがな!)

これは、アインシュタインの方程式の解から発見された考えじゃ。
このように、現代の宇宙像の多くは一般相対性理論に基づいて論じられておるのじゃ。




【アインシュタインの思考の基礎にあるもの】

さて、次の問題じゃ。
「アインシュタインの思考の奥底にあるもの・・それはなんじゃろう」

これは、アインシュタイン自身に答えてもらおうかの。
彼の回想録に、その答えが書いてある。
以下を読んでくれたまえ。

「私が生涯を通じてやろうとしたのは、ただ、問いかけることでした。

神はこの宇宙を、別な風に作ることができたのだろうか。
それとも、こう作るしかなかったのだろうか。
そして、もしチャンスがあったなら、私はどんな風に宇宙を作っただろうか。」

つまり、アインシュタインの思考の奥底にあったのは、
『神の意図を読みとる』という、壮大な野心だったのじゃ。
そして、それは成功したというわけじゃな。

では、それが成功した一番の要因とはなんじゃろうな?
塾生諸君、ここが、今回の稽古の一番肝心なところじゃ。
少し、頭を使って考えてくれんかの。
それは、「制約なしの単純さ」じゃ。
やはり、彼の回想録から言葉を借りる。

「それは突然のことでした。ある考えがひらめいたのです。人生で最高の思いつきといってもいいでしょう。『もし、人が屋根から落ちたら、その人は自分の重さを感じないだろう』と考えたのです。」

これじゃな。
普段、どんな人でも、自分の重さを実感しながら生きておる。
ところが、高いところから落ちると、その体重はなくなるんじゃ。

塾長は、なんどか、この体験をした。
本当に体重はなくなるんじゃな。
何も、宇宙飛行士にならなくても、体験できるんじゃよ。

しかし、ここまでだったら、
アインシュタインもこの塾長も、たいして変らんのじゃ(ゴホン、ゴホン)。
アインシュタインのすごいところは、ここで思考が止まらんのじゃ。

彼は、さらに、こう考えた。
ある人がエレベーターに乗っている時、ケーブルが切れたらどうなる?
エレベーターは、奈落の底に向って落ちる。
そして、乗っている人は浮き上がり、無重力になる。
人とエレベーターは、どちらも地球の「重力場」において同じ速度で自由落下する。

では、その人が宇宙ロケットの中にいたらどうなるか?
それでもやはり、浮いている。
床に足をつけさせる「重力場」がないからである。

では、ロケットが動き始めたらどうなるか?
ロケットが加速すれば、ロケットの床は上昇し、乗っている人にぶつかる。
乗っている人にとっては、足が床に着いたと感じるだろう。
つまり、「重力がある」と感じるだろう。
ロケットの「加速」が「重力」と同じように感じられるなら・・・
もしかすると、二つは同じものではないだろうか?
アインシュタインは、そう考えたのである。
「加速」と「重力」が同等ではないか、とする、この考えは、
やがて、革命的な新理論の基礎となる。
これこそ、当道場が求めてやまない思考法なのじゃ。

では、続きは、次号で!

(注)掲載した写真の著作権はイスラエル・ヘブライ大学に帰属します。