「基本の原価管理術」(16の術)配賦の術

2018.06.02

16の術:配賦の術
 
「配賦」という言葉はご存知でしょうか。
似た言葉に「配付」がありますが、どう違うのでしょうか。
簡単に言うと「配付」は相手を特定せずに配ること、「配賦」は相手を特定しながら配ることと定義されています。
つまり、「配賦」とは「これは、○○さんに」と、相手を認識しながら配るということです。
 
同様に、建設原価管理における「配賦」とは、工事別に把握できずに共通費として一括把握した原価を、客観的な計算基準に沿って各工事ごとに配分する処理のことを意味します。
前章の人件費も、そうした共通費の一つです。
その他には、工事部門の交通費や車両費、諸経費などがあります。
こうした費用は、工事別に把握することは難しく、また現実的ではありません。
 
なので、実際にそうした配賦管理を行っている某社の例をあげます。
この会社では、「工事部共通工事」という架空の工事を設けて、こうした共通経費をその架空工事の原価として把握していきます。
この架空工事は、売上=0円で原価だけが溜まっていきますから、大赤字となります。
それを年度末に、各工事の原価総額の比率で分割し、各工事の原価として「配賦」します。
結果として、この架空工事は「売上=0、原価=0」となり、何も残りません。
 
この会社は、今では配賦処理を年度末ではなく“毎月末”に行っています。
もちろん毎月では計算が大変ですが、配賦機能を有するコンピュータ・システムを使った自動処理を実現しています。
さらに、人件費についても、同システムの機能で各工事に的確に配賦を行っています。
もっとも人件費の場合は、原価総額の比率で配賦というような乱暴なことは出来ませんから、給与システムおよび日報管理システムと連動させ、現実と合わせた配賦を行っています。
 
原価管理をここまでシビアに管理する必要があるのかと疑問を持たれるかもしれませんね。
たしかに、そうかもしれません。
しかし、断定しても良いですが、シビアに原価管理を実行されている会社はそうでない会社より利益が上がっています。
あとは、みなさんの判断しだいです。