「基本の原価管理術」(20の術)実行予算が落とし穴?

2018.06.30

20の術:実行予算が落とし穴?
 
「原価管理術」と名前を付けながら、肝心の「実行予算」の話が最後のほうになってしまいました。それには理由があります。
これから造る建設物を「このような原価構造で造る」という計画書が実行予算ですが、その目的は予算書を作ることではなく、計画どうりに工事を遂行して「目論見利益」を「現実の利益」に変えることにあります。
ゆえに、先に工事原価の「把握方法」および「分析方法」を理解してもらい、それらの方法が実行できる形式で実行予算を作る必要があるので、このような構成にしたのです。
 
こんなことは当然なのですが、現実はそうではありません。
実行予算も作らずに、「目標粗利20%」などと指示を出す会社が多いのです。
また、作成したとしても、工程に沿って原価を把握できる構造になっている実行予算は”皆無”と言ってもよいのが建設産業の現状なのです。
 
なぜ、正当な構造の実行予算が作られないのかと言うと、”難しい”からであり、”手間がかかる”からです。
だから、実行予算があっても、「見積りの焼き直し」のような実行予算が大半なのです。
こんな実行予算では、工事が終わった後に、最終的に確定した「実際原価」と工種単位の総額を比較することぐらいしかできません。 実際、”そんな”実行予算ばかりです。
 
現実論として、“正当な”実行予算を作るには、相当な知識と工事の経験が必要です。
新入社員はもちろん、施工経験の浅い若手では無理と言わざるを得ません。
実行予算の作成は“難しい”のです。
 
ゆえに、残念ながら、先輩の作成した実行予算を参考に、“なぞる”ぐらいしか出来ないでしょう。
しかし、そこに落とし穴があるのです。
 
その先輩の作った実行予算そのものが、施工のフォローに合わせて、時系列に予算と実績を対比して工事利益を管理するようには作られていないケースが大半だからです。
それなのに、新入社員や若手社員が「それが正当な実行予算」と思い込んでしまうとしたら、まさに「落とし穴」ですね。