第12回:午前4時の役員会
2008.12.01
「常識の殻を破り、豊かな発想力を手に入れたい」
こんな願望を持っている諸兄は多いであろう。
ならば、ここ、脳内道場で『脳力』を鍛えることだ。
本道場で「常識の殻を破り、豊かな発想力を身につける」稽古をすることだ。
全ての「当たり前」に疑問を持ち、逆の方向から考える力が確実につくであろう。
さて、今回は、取締役の肩書きを持つ諸兄がイヤな顔をされる話をしよう。
すでに、題名を見た瞬間、逃げ腰の者もおろう。
それも結構だが、逃げるのは、一汗かいてからでもよかろう。
まあ、前置きはこのくらいにして稽古に入ろう。
【午前4時の役員会】
今回のテーマは、「早朝会議の勧め」などではない!
そのような精神的訓話ではなく、「必然の行動」の話である。
また、実話を基にした話であることも付け加えておく。
米国の某中堅製造業の会社が経営危機に見舞われた。
老朽化した工場、弛緩した職場の空気、赤字の垂れ流し・・・
連日会議を重ねるが打開策は作れず、事態は悪化する一方であった。
大枚をはたいた経営コンサルも逃げ出し、いよいよ破滅の足音が近づいてきた。
そんな中、経営トップは一人の男を外部から副社長として招聘した。
経営トップが役員会の反対を押し切って招聘したのは、40代の日系2世であった。
社内データの精査、社内外の聞き取り、各種会議への参加、などなど
精力的に動いた彼であったが、これといった意見は述べなかった。
ややしびれを切らした経営トップは、焦り半分、失望半分で尋ねた。
「何かよい策は思いつきましたか?」
「いえ!」
彼の答えは拍子抜けするものであった。
「劇的に会社を救う方法などありませんよ。
当り前のことを当たり前のようにやるしかありませんね」
ガッカリした経営トップに向かって、彼は言った。
「問題は、何が『当り前』なのかって言うことです」
「?」と、当惑顔の経営トップ。
かまわず、彼は続けた。
「3年間、私に役員会を仕切る権限をください」
彼は行動を起こした。
まず、中古のバスを買った。
古いスクールバスを格安で譲ってもらったのだ。
(注釈:米国のスクールバスは、日本の通常のバスぐらいの大きさはある)
それから、役員たちに1週間分の着替えを持ってこのバスへの乗車を命じた。
バスは、1週間、この会社の工場を巡って走った。
そして、彼は、毎朝、このバスの中で役員会を開いたのだ。
バス中での役員会は、毎回、以下のように推移した。
これから視察する工場に関する分析資料を配り、
誰が、どこでどんな視察をし、どんなデータを収集するか、
工場の責任者にその結果を確認する会議を何時から行うか。
役割分担と時間割が決められた。
バスが工場に着くやいなや、全員が決められた場所へ散っていく。
そして、夕方、工場の会議室で収集データの確認が行われる。
これを毎日続けた。
ここで考えて欲しい。
普通、工場の始業時間は何時であろうか。
日本も米国も、さして変わらず、だいたい8時である。
この時刻に合わせ、バスは午前7時に工場に到着するようにした。
ということは、
バスの中の役員会は何時に開催となるのであろうか。
「午前4時」
この意味が分かったかな?
精神論的に午前4時にしたわけではなく、
上記目的のために、「必然的に」午前4時になったのである。
「そんなバカなこと出来るか」と思われたかな?
さよう、この会社でも、多くの役員は、そう思った。
そして、途中でバスを降りる役員が続出した。
それでも、バスは走り続けた。
各工場への訪問回数も3回、4回と回を重ねた。
半年で、バスの乗客は1/4になった。
しかし、バスに残った乗客の顔付きは大きな変化を遂げていた。
現場で見る現実、現場で働く者たちとの生の議論、
午前4時の役員会は次第に熱を帯びたものになり、
彼らを迎える工場にも熱気が戻ってきた。
1年後、3期連続赤字を垂れ流した会社は黒字に転じた。
この話の意味するところは、もうお分かりであろう。
新任の副社長の言った「当り前のことを当たり前にやる」ことも。
だが、多くの企業では「午前4時の役員会」を開くことが出来ない。
また、この話を文字通りに受け止め、
「我が社の役員会も午前4時開催とする」などは論外である。
「我が社にとっての『午前4時の役員会』とは何であろうか」
問い掛けたいのは、この1点に尽きる。
それが分かったら、とにかくバスを出すことである。
そして、バスを走らせ続けるのである。
不満や辛さでバスを降りる者は降ろせばよい。
説得など無用。
たとえ、全員が降りてもよい。
その時は、新たに若い乗客を抜擢し、また走り出せばよいのである。
午前4時の役員会を出来ないと言い、
バスが出せないと言い、
みんながバスを降りてしまうかもしれないと怯える。
そんな甘さが今の事態を招いたことに経営者自身が気付かない。
いや、「分かっているよ」と言いながら何もしない。
「そのうち・・・」と言いながら何もしない。
それを「惰眠」という。
こんな願望を持っている諸兄は多いであろう。
ならば、ここ、脳内道場で『脳力』を鍛えることだ。
本道場で「常識の殻を破り、豊かな発想力を身につける」稽古をすることだ。
全ての「当たり前」に疑問を持ち、逆の方向から考える力が確実につくであろう。
さて、今回は、取締役の肩書きを持つ諸兄がイヤな顔をされる話をしよう。
すでに、題名を見た瞬間、逃げ腰の者もおろう。
それも結構だが、逃げるのは、一汗かいてからでもよかろう。
まあ、前置きはこのくらいにして稽古に入ろう。
【午前4時の役員会】
今回のテーマは、「早朝会議の勧め」などではない!
そのような精神的訓話ではなく、「必然の行動」の話である。
また、実話を基にした話であることも付け加えておく。
米国の某中堅製造業の会社が経営危機に見舞われた。
老朽化した工場、弛緩した職場の空気、赤字の垂れ流し・・・
連日会議を重ねるが打開策は作れず、事態は悪化する一方であった。
大枚をはたいた経営コンサルも逃げ出し、いよいよ破滅の足音が近づいてきた。
そんな中、経営トップは一人の男を外部から副社長として招聘した。
経営トップが役員会の反対を押し切って招聘したのは、40代の日系2世であった。
社内データの精査、社内外の聞き取り、各種会議への参加、などなど
精力的に動いた彼であったが、これといった意見は述べなかった。
ややしびれを切らした経営トップは、焦り半分、失望半分で尋ねた。
「何かよい策は思いつきましたか?」
「いえ!」
彼の答えは拍子抜けするものであった。
「劇的に会社を救う方法などありませんよ。
当り前のことを当たり前のようにやるしかありませんね」
ガッカリした経営トップに向かって、彼は言った。
「問題は、何が『当り前』なのかって言うことです」
「?」と、当惑顔の経営トップ。
かまわず、彼は続けた。
「3年間、私に役員会を仕切る権限をください」
彼は行動を起こした。
まず、中古のバスを買った。
古いスクールバスを格安で譲ってもらったのだ。
(注釈:米国のスクールバスは、日本の通常のバスぐらいの大きさはある)
それから、役員たちに1週間分の着替えを持ってこのバスへの乗車を命じた。
バスは、1週間、この会社の工場を巡って走った。
そして、彼は、毎朝、このバスの中で役員会を開いたのだ。
バス中での役員会は、毎回、以下のように推移した。
これから視察する工場に関する分析資料を配り、
誰が、どこでどんな視察をし、どんなデータを収集するか、
工場の責任者にその結果を確認する会議を何時から行うか。
役割分担と時間割が決められた。
バスが工場に着くやいなや、全員が決められた場所へ散っていく。
そして、夕方、工場の会議室で収集データの確認が行われる。
これを毎日続けた。
ここで考えて欲しい。
普通、工場の始業時間は何時であろうか。
日本も米国も、さして変わらず、だいたい8時である。
この時刻に合わせ、バスは午前7時に工場に到着するようにした。
ということは、
バスの中の役員会は何時に開催となるのであろうか。
「午前4時」
この意味が分かったかな?
精神論的に午前4時にしたわけではなく、
上記目的のために、「必然的に」午前4時になったのである。
「そんなバカなこと出来るか」と思われたかな?
さよう、この会社でも、多くの役員は、そう思った。
そして、途中でバスを降りる役員が続出した。
それでも、バスは走り続けた。
各工場への訪問回数も3回、4回と回を重ねた。
半年で、バスの乗客は1/4になった。
しかし、バスに残った乗客の顔付きは大きな変化を遂げていた。
現場で見る現実、現場で働く者たちとの生の議論、
午前4時の役員会は次第に熱を帯びたものになり、
彼らを迎える工場にも熱気が戻ってきた。
1年後、3期連続赤字を垂れ流した会社は黒字に転じた。
この話の意味するところは、もうお分かりであろう。
新任の副社長の言った「当り前のことを当たり前にやる」ことも。
だが、多くの企業では「午前4時の役員会」を開くことが出来ない。
また、この話を文字通りに受け止め、
「我が社の役員会も午前4時開催とする」などは論外である。
「我が社にとっての『午前4時の役員会』とは何であろうか」
問い掛けたいのは、この1点に尽きる。
それが分かったら、とにかくバスを出すことである。
そして、バスを走らせ続けるのである。
不満や辛さでバスを降りる者は降ろせばよい。
説得など無用。
たとえ、全員が降りてもよい。
その時は、新たに若い乗客を抜擢し、また走り出せばよいのである。
午前4時の役員会を出来ないと言い、
バスが出せないと言い、
みんながバスを降りてしまうかもしれないと怯える。
そんな甘さが今の事態を招いたことに経営者自身が気付かない。
いや、「分かっているよ」と言いながら何もしない。
「そのうち・・・」と言いながら何もしない。
それを「惰眠」という。