日本の未来を明るくするには(4) 【HAL通信】2014年5月31日号より

2014.11.04

増税後の消費の落ち込みは想定内という見方と、家庭消費は予想以上に落ち込んでいるという見方まで、報道はバラバラ。
果たして、消費者心理は、増税の負荷を乗り越えられるのか否か。

前号で述べたように、景気は「気」からである。
私は、将来への期待が次第に高まり、「気」が消費の落ち込みを防ぐと分析している。
この気を高めたこと自体は安倍首相の功績と言ってよいであろう。
外交での強気の発言も、今のところ、経済的にプラスに働いている。

あとは、本物の景気回復への扉を開けるだけなのだが、これが一筋縄ではいかない。
前号で、以下のような成長戦略の3つの柱を掲げた。
1.画期的なイノベーション
2.売れる商品、サービスの開発
3.生産性の向上
いずれも主役は民間企業である。
政府の役割は「企業により多くの自由を与え、資金が回るような構造改革」を行うことにある。
もし、安倍首相が政府主導の第三の矢を考えているとしたら、失敗するであろう。

当然、現政府は、このことを理解していると思う。
しかし、1000兆円に達した公的債務が政策の大きな足かせになっている。
公的債務残高はGDP(国内総生産)の2倍にまで膨れ上がっている。
この状態で長期金利が大きく上昇すると、国の利払い費は急激に膨らみ、財政は一気に危機的状況に陥る。
そうした事態を避けるために、日銀は、追加財政に伴って発行される国債の大半を購入している。
中央銀行が国債を購入することは禁じ手であるが、金利上昇を防ぐ意味から、今の日本においては、やむを得ない政策である。
黒田総裁の決断は「正しい」と評価する理由である。

ただし、問題はこれからである。
金融政策は、どれほど優れていようと時間稼ぎにしか過ぎない。
これは企業経営も国家運営も同じである。
問題は、こうした時間稼ぎの間に、景気回復を軌道に乗せられるかである。
景気が回復し、名目GDPが1%増えると税収は3~4%増えるといわれる。
このサイクルが形成され、続けられれば、財政再建につながる可能性が出てくる。
これが、かって「上げ潮派」と呼ばれた政治家集団の言い分である。

「しかし、そんなうまい具合にいきっこない。やはり増税しかない」
これが「財政再建派」と呼ばれた政治家集団の言い分である。

結局、「財政再建派」が勝って、消費税増税が決まったわけである。
では、第二ラウンドはどうなる・・
続きは次号で。