日本の未来を明るくするには(7) 【HAL通信】2014年8月31日号より

2014.11.07

アベノミクス第三の矢「成長戦略」は民間主導でなくてはならない。
安倍政権はこのことを理解していると思うが、しかし、個々の政策レベルになるとどうも怪しくなる。
たとえば、財務省が描く財政再建策は成長戦略と相容れない部分が多いが、政権側がこの不整合を真剣に考えている様子は見えない。
それどころか、安倍政権は、財務省のシナリオに沿った政策を推し進めようとしているように見える。

政府は「2020年に基礎的財政収支(プライマリーバランス)を黒字にする」という目標を掲げているが、これは、「国の税収(収入)」と「政策的経費(支出)」との収支を均衡させる政策で、黒字化は財政再建の絶対条件である。
つまり、完全に財務省のシナリオに沿っている。

日経は、お先棒を担ぐかのように「消費税率14%が必要」と主張している。
週刊誌の報道なので信ぴょう性は怪しいが、週間ポストは、『安倍政権が密かに描く「消費税16%」、東京五輪までにプライマリーバランス黒字化』といった刺激的なタイトルまで掲げている。
この記事には、日経をはじめとする多くのマスコミがこうした増税策に寛容なのは、「政権がぶら下げている『新聞の軽減税率』というニンジンを、新聞側がヨダレをたらしてほしがっているからだ」と書かれている。
どうやら週刊誌は、この軽減税率の対象外とされているようで、それに対する批判記事となっている。

もとより輸出型の大企業は消費税増税に大賛成である。税の還元額が大幅に増えるし、その引き換えに法人税減税となるなら「願ったりかなったり」である。
国民も、食料や生活必需品の税率が低くなるなら「まあ、いいか・・」となりそうである。

ところが前号でも述べたが、その裏では、政府税調が「外形標準課税」を打ち出したように、中小企業を狙い撃ちにする増税策が練られている。
この課税は確実に中小企業の経営を弱めてしまう。
「それが分かっていて、なぜ?」と思うのが自然だが、政権の中枢は「それが日本経済の構造改革を促すことになる」と思っている。
つまり、弱い中小企業を退場させ、ベンチャー型の中小企業を登場させるというシナリオである。

だが、この政策は、韓国と同じ轍を踏むことになるのではないかが危惧される。
弱いとされる「労働集約型」の中小企業は、日本の雇用の多くを支えている。
これに対し、ベンチャー企業は「知識集約型」の企業が多く、従業員の雇用は相対的に少なくなる。
「外形標準課税」は明らかに前者に厳しい税体系である。