第1回 世界経済と日本
2011.12.22
本連載は、話題をあちこち自由に振っていこうと思っています。
少々支離滅裂になるかもしれませんが、それも楽しんでお読みください。
その中に、自分や自社の儲けにつながるヒントがあるかもしれません。
著者である私も、一方で、読者の皆様と同じ視点で自分や自社の儲けへの道を探っていきます。
第1回は、全体像を語る意味で、少し固い話から入ります。
[第1回 世界経済と日本]
◇世界の中での日本
日本は必ず復活する。
だが、それには幾つかの条件がある。
その一つが、「島国日本からの脱却」である。
といっても「海外へ行こう!」という単純なことではない。
世界の中での日本を意識して考え、そして行動せよ、という意味である。
日本人は、国内問題と国際問題を分けて考えようとする。
それが、まさに「島国意識」なのだ。
その意識が昇華して、戦前は「神国日本」となり、戦後は下向して、「悪い国日本」という国民意識となった。
180度反対の意識だが、その根は同じである。
「世界の中の日本」という視点を持たず、戦前は思い上がりとなり戦後は自虐となった。日本国民の多くは、敗戦という未曽有の体験をしてなお、そこに気が付いていない。日本は「世界を見ようとしない、穴こもりの国家」のままなのだ。
ここからの脱却が日本復活の道なのである。
それでは、今の世界経済を米国、欧州、中国の三極、さらに金融という現代の恐竜を見てから、日本を見に行くとしよう。
[第1回 世界経済と日本]
[第1回 世界経済と日本]
◇米国の景気回復は本物か
米国のXmas商戦が好調だ。
この2年間9%台だった失業率も8.6%(11月)と大幅に改善した。
米国の景気回復は本物と見るエコノミストも出てきた。
たしかに、米国の景気は回復傾向にあると言ってもよいであろう。
しかし、そう単純な話ではない。
Xmas商戦が好調といっても、安売り競争の激化がその背景にある。
ニューヨークでは、日本のシャープ製の42型テレビが日本円にして15,500円で売られている。
日本の家電量販店で、こんな価格を付けている店はないであろう。
この価格のからくりの解明はさておくとして、当のメーカーは、増収でも減益になり、渋い顔である。
[第1回 世界経済と日本]
また、失業率の改善も中身が伴っていない。
長期失業者の雇用はほとんど改善されていないのだ。
年収170万円(4人世帯で)に満たない米国の貧困層の割合は17%に及ぶ。
一方、頂点に君臨するトップ層の年収は数十億円~数百億円。
米国は、際限なく広がる格差社会なのである。
米国市場の強みは、欧州や日本と違い、増え続ける人口にある。
つまり、メキシコなどからの移民が多いのであるが、このことが失業率を押し上げ、あぶれた失業者と移民との軋轢(あつれき)を生む。
不法移民の数は1100万人ともいわれる。
人口の増加がマクロで経済成長を促すが、反面、格差や社会問題の増大を招く。
これがアメリカの現実である。
[第1回 世界経済と日本]
◇欧州連合(EU)の混迷は深まる
12月9日のEU首脳会議で、ユーロ圏17カ国が計1500億ユーロ(約15兆円)を国際通貨基金(IMF)へ拠出することを確認。
さらに、ユーロ圏以外からの融資も集め、融資規模を最大2000億ユーロにすることを決め、10日以内に詳細を固めるとしていた。
EUは12月19日、加盟国財務相による電話協議を行い、IMFへの融資にユーロ圏のほかチェコ、デンマーク、ポーランド、スウェーデンの4カ国が協力の意向を表明したと発表した。
しかし、英国は年明け以降に20カ国・地域(G20)の枠組みで貢献を明らかにすると表明するにとどまり、貢献の明示を避けた。
このことで、2000億ユーロの目標に届かないことが確実となった。
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[第1回 世界経済と日本]
ドイツのメリケル首相は、EU各国の財政的規律を求めるだけでなく、EUが加盟国に対し財政規律を強制出来る処置を要求している。
その半面、EU共同債の導入には断固反対の姿勢を崩さない。
それは当然であろう。共同債はドイツにとって恩恵はゼロ、負担は無限大なのだから。
だが、英国は先の首脳会議で、ドイツとフランスが主導するユーロ圏の財政協定に反対姿勢を貫き、孤立した。
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[第1回 世界経済と日本]
英国には英国の事情がある。
オズボーン財務相は成長率の見通しを2.5%→0.7%に下方修正した。
そのような中で、ユーロ圏への財政支援など出来ようはずがない。
ユーロ圏の主導者である独仏への警戒心も強い。
独と英の亀裂は、欧州全体の債務危機対策に影響を及ぼす形となった。
調整役の仏も足元は万全ではない。
IMF強化に対しては、ブラジルなどBRICS各国も支援を表明したが、実現しても時間稼ぎにしかならない。EUの崩壊危機を招いているのはEU各国の国民意識である。
その意識改革なくしてEUの強化はあり得ないのである。
欧州経済は、今も16世紀に始まる植民地経済の延長線上にある。
かつての植民地は戦後独立を果たしたが、その後も経済は欧州各国に握られ、富は搾取され続けた。
敗戦国のドイツだけがその実を取れずに自力による経済再建を強いられた。
だからドイツ経済だけが強いのである。
欧州の植民地だった途上国は、今や経済の自立も強めている。
欧州の搾取の構造は崩れているのである。
欧州各国の国民がこのことを直視し、自らが働き・稼ぐことに目覚める以外に欧州経済の再生は無い。
[第1回 世界経済と日本]
◇中国のバブルはいつ弾けるのか
今の中国経済は、20年前の日本の再生映像を見ているようである。
不動産バブルは既に弾け始めている。
バブル崩壊は時間の問題のように映る。
ただ、日本との違いも大きい。
政治形態が全く違うということは、今後の予測を難しくさせる。
資産格差が異常に大きいことも、中国の場合は、バブルの継続にはプラスとなる。国土の大きさや人口の多さが、旺盛な投資余力を支えるからだ。
だから、単純に「日本のように」とは予測できない。
来年、中国の政権指導部が入れ替わる。
新指導部の能力は未知数である。
能力、指導力があれば軟着陸は可能かもしれない。
だが反対であれば、大きな失速を招くであろう。
当面、今のバブル経済は続くと見てよい。後は、新政権発足まで待つしかない。
[第1回 世界経済と日本]
[第1回 世界経済と日本]
◇金融という現代の恐竜
ポートフォリオという経済理論が生み出した現代の恐竜、「資金ファンド」。
だが、その実態はよく分からない。
当初は、欧米の民間ヘッジファンドがその主役であったが、今や国家ファンドが主役の座に座る。
その実態はオイルマネーで潤う中東国家やロシア、巨額な外貨準備高を持つ中国、新興著しいシンガポールやマレーシアなどの国家が運用するファンドである。
世界中を飛び交うこの恐竜の大きさは5兆ドル(400兆円)とも言われている。
これらのカネがどう動くかで世界経済は翻弄される。
その動きが実態経済と連動していれば良いのだが、その保証はない。
実は、日本もこの恐竜の一匹になる力を持っている。
外貨準備高1兆ドル(80兆円)は、十分にその資格ありである。
さて、日本政府はどうしたらよいのか。
それは第2回以降で解説するとしよう。
[第1回 世界経済と日本]
◇日本
今の日本を象徴する(と、私が勝手に思っている)2つのエピソードを話そう。
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[第1回 世界経済と日本]
(1)砂金採り
伊豆の土肥金山では、砂金採りが出来る(他の金山跡でも似たようなイベントを行っている)。
あるTV番組で、番組スタッフがこの砂金採りに挑戦していた。
さて、その損得は。
入館料は600円、採った金の価格は211円だった(1年前だったら118円)。
指先の小さな金の粒を狂喜してカメラに示した番組スタッフは、計量後の金額を告げられて、「へっ?」とした顔をしていた。
「金(きん)」という言葉が、これだけ人の感覚を狂わせるのである。
これまで5000円獲得の猛者もいたということだが・・
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[第1回 世界経済と日本]
(2)年末ジャンボ
庶民のささやかな夢か毎度のバカ騒ぎか。年末恒例の宝くじ販売が年々派手になっているようである。
今年は、1等2億円の当りくじが2倍になったと大宣伝を繰り広げているが、大いなるまやかしである。宝くじの還元率が2倍になったかのような錯覚を起こさせるが、還元率は45~48%で変わらない。
これでは誇大広告ではないか。
宝くじの1等(2億円)の当りくじの数は、
1ユニット(1000万枚)あたり1本の割合なのである。
つまり、30億円出して1ユニット(1000万枚)を買い占めれば、絶対に1等に当選するのだが、前後賞を入れても獲得額は3億円、他の当りくじを入れても、30億円×46%=13.8億円である。
まあ、確実に16億近い損をするわけである。
胴元が地方自治体である宝くじは、この1ユニットあたり16億円の損(買った人の損)は、地方自治体の懐に入る。
つまり、形を変えた「税金」である。
さらに、金持ちは宝くじを買わない。
購入者が社会的弱者に偏っていることは周知の事実。
とすると、この「税金」は、貧乏人に重税を課す強烈な「逆進性」の税金というわけである。
消費税の逆進性がよく問題にされるが、宝くじの逆進性を問題にする話は聞かない。
よっぽどひどい税金と思うのだが。
ちなみに、宝くじ以外の各種ギャンブルの還元率は、おおよそ以下のようである。
競馬:75%、ルーレット:95%
スロットマシン:96%
パチンコ:97%
クラップス:99%
ブラックジャック:96~102%。
ヤクザの賭場:92%(聞いた話で信ぴょう性は??)。
ブラックジャックはプレイヤーの技量が反映するので、100%を超えることが可能ということである。
麻雀なんかもそうと言える。
ところが、宝くじには当たる確率を上げる「攻略法」や「必勝法」なんて無い。
当たりやすい売り場で買おうが、神様に願を掛けようが、当選確率は一切上がらない。
有楽町の売り場に長蛇の列を作る庶民。
全く意味のない行動なのだが、毎年繰り返される風景である。
どこで買おうが、買えば買うほど損をする。
これが宝くじである。
[第1回 世界経済と日本]
◇今回の反省と次回の予告
ちょっと前置きが長すぎましたね。
次回の第2回は、日本の株価と国債の話をしましょう。
日本の復活にとって欠かせないことなので・・
[第1回 世界経済と日本]
◆歴史認識における自虐史観について
北朝鮮の金正日死去のニュースでどこかに飛んでしまったが、来日した韓国の李明博(イ・ミョンバク)大統領が強烈に主張して、せっかくの首脳会談を意味のないものにしてしまった従軍慰安婦問題。
[第1回 世界経済と日本]
そもそもの発端は、1991年の朝日新聞の記事である。
『私の戦争犯罪――朝鮮人強制行』という本に書かれた「証言」を論説で取り上げたことにある。
それまで韓国内で、この問題を提起したことはなかった。
事実ではないからである。
後に、この本の著者自身が「あれは創作だった」と述べたが、時すでに遅く、証拠もないウソが根をおろしてしまった。自虐のつけは大きい。