第28回:放射線の本当の恐さとは(その1)

2011.12.12


今回、HPが全面リニューアルされ、本原発コーナーも脳内道場の間借りを脱して、独立することになりました。
これまで、脳内道場の塾長がイントロ担当を兼務していましたが、このたび若返りました。
前任者同様、よろしくお願いいたします。

名物塾長は脳内道場で健在、間もなく再開されます。
こちらもよろしくお願いします。

各地で見つかる「ホットスポット」なる汚染地域や農作物汚染、がれき処理など・・
過剰報道と過剰反応の相乗効果としか思えない負のスパイラル状態が続いているようですが、むしろ、このストレスの蓄積が一番の害ではないでしょうか。

放射線による健康被害というと、多くの人は広島・長崎の悲惨な状況を思い浮かべてしまいます。
また、チェルノブイリで被害にあった人々の姿をyou tubeなどでご覧になられた方も多いと思います。
いずれも目をそむけたくなる光景で「原子力など人類には要らない」と言いたくなる気持ちは分かります。
しかし、現実には世界で数百の原発が稼働し、増え続ける一方です。
日欧の原発稼働には大きなブレーキがかかるでしょうが、途上国のエネルギー事情は深刻です。
石油に頼れない途上国が原発に期待する気持ちは切実です。
それらの国々は、日本が今回の事故を乗り越えて、より安全性の高い原発を実現することを望んでいます。
我々は、どう考えていくべきなのでしょうか。

それでは、今回は放射線の人体に対する影響を、引き続き特別講師に語ってもらいます。
今後は、この問題と同時に、今回の事故の真相にも迫ってもらう予定でいます。



しばらくご無沙汰しておりましたが、また解説を担当させていただきます。
分かりやすい解説を心掛けますので、改めてよろしくお願いいたします。





【福島で規制値を超えるコメが見つかる】

★規制値を超えるコメが次々に判明
新米の出荷時期を迎え、危惧されていたことが福島県下で起きている。
まず、報道内容を以下に整理してみた。

(1)福島市大波地区
農家5戸で生産されたコメから、新たに暫定基準値(1kg当たり500ベクレル)を超える放射性セシウムが検出された。
国は11月17日に大波地区で採れたコメを出荷停止にした。県は22日から地区全域を対象にコメ全量の緊急調査を始め、24日の時点で最大で1270ベクレルを検出した。
県のまとめによると、福島市大波地区の全袋検査では、28日までに1637袋を調べ、うち171袋で基準を超えた。


(2)福島県伊達市
福島市に隣接する伊達市小国地区と月舘地区で合わせて3戸の農家が収穫したコメ(玄米)から暫定規制値(1kg当たり500ベクレル)を超える放射性セシウムが検出された。
県によると、伊達市の旧小国村では、101戸の農家の119サンプルのうち2戸の2サンプルで1kg当たり580ベクレルと780ベクレルを検出。
旧月舘町では、6戸の8サンプルのうち1戸1サンプルで同1050ベクレルを検出した。

(3)福島市渡利地区
福島市の中心部に近い渡利地区で、3戸の農家が収穫したコメから新たに国の暫定基準値を超える590ベクレルから510ベクレルの放射性セシウムが検出された。
福島県は、渡利地区を含む福島市の一部の地域に対して、コメの出荷の自粛を求めることを決めた。対象地域のコメ農家は406戸に上る。
福島市の渡利地区は、福島県庁がある市の中心部に隣接している地域で、空間の放射線量が周辺に比べて高く、自主避難する住民も多く出ている地区。

★福島県の対策は?
福島県は、大波地区や伊達市などの放射性物質の検出を受けて、放射線量が周辺より高い二本松市と本宮市の一部の地域でも2300戸余りの農家すべてで検査を行うことを決めた。

★福島県の検査ではOKだったはずでは?
伊達市の旧小国村と旧月舘町は福島第一原発からおよそ50キロ離れているが、一部の世帯で積算の放射線量の推定値が避難の目安となる年間20ミリシーベルトを超えたため、「特定避難勧奨地点」に指定されている。

福島県がこれらの地域で先月までに行ったコメの検査(収穫前の予備検査と収穫後の本検査を計7カ所で実施)では放射性セシウムが検出されたが、いずれも暫定規制値を大幅に下回り、出荷が認められた。

しかし、収穫前後の二重検査をすり抜け、規制値を超えるコメが流通する事態に至ったことについて、厚労省は、「県の原因調査を見極めたうえで、来年以降の作付け制限や検査態勢の在り方を農林水産省など関係機関と協議したい」と説明した。

★検査体制に不備があったのでは?
福島県内にコメ農家は6万戸あり、すべてを検査することは困難なことから、福島県は、一定の地域ごとに調査地点を選ぶ「抽出検査」を行ってきた。

収穫前の「予備検査」では、400地点余りが対象となったが、このうち、二本松市内の1か所で、国の暫定基準と同じ値の放射性物質が検出された。
このため、収穫後の「本検査」では、二本松市を重視し、おおむね集落ごとに1か所ずつ、それ以外の市町村では、「昭和の大合併」の前の旧市町村ごとに2地点ずつ行われた。

その結果、「本検査」が実施された1174地点のうち82%に当たる964地点では放射性物質が検出されず、検出された地点でもいずれも国の暫定基準値を下回った。

これを受けて、ことし作付けが行われたすべての市町村でコメの安全性は確保されたとして、福島県は、佐藤雄平知事名で10月12日に安全宣言をし、出荷が始まった。

しかし、今月に入って福島市大波地区で、農家による自主的な検査で国の基準を超える放射性物質が検出され、これを受けて、福島県は大波地区の農家ですべてのコメの袋を調べる検査を始めたほか、局所的に放射線量が高い福島市や伊達市など4つの市の一部の地域でも、生産されたコメを50袋ごとに1つを選んで、きめ細かな検査を行っていた。
その結果、伊達市などでも基準値を超えるコメが発見されるに至った。

政府は、コメについて「作付け制限」「予備調査」「本調査」と、他の農産物よりも厳格な三重の検査体制を敷いていた。その内容を以下の図に示す。




まず、4月に田に水を入れる前に土壌からセシウムが5000ベクレル/kg以上検出された地域でコメ作付の制限を行った。
この結果、福島第一原発から半径30km圏内の約9000ヘクタール、農家戸数で7000戸では今年はコメは作られていない。
さらに9月から予備調査が行われた。

調査は、土壌中のセシウム値か空間放射線量が一定値以上となった自治体を対象に、収穫前の稲を抜き取りサンプル調査を行ったものだ。
ここで200ベクレル/kgを超えた自治体は、抽出数を増やし、収穫後に出荷を待つコメを対象に本調査を行う。

本調査で暫定規制値の500ベクレル/kgを超えたものが出ると、自治体単位で出荷停止となるという流れだ。

福島県でもこの流れに則り、9月中に449地点で予備調査を、10月12日までに1174地点で本調査を行った。
その結果、県内の48の市町村のうち、予備調査時点で500ベクレルが検出され、本検査で細かく検査をされる対象の「重点検査地域」となったのは二本松市1市だけだった。
その二本松市でも、288地点で調査した結果、規制を超えるセシウムは検出されず、コメの出荷が開始された――という経緯である。


★最初に汚染米が見つかった大波地区とは、どんな地域なのか?
大波地区は、福島市郊外の山あいに位置し、局地的に放射線量が高いホットスポットがある。
一時は特定避難勧奨地点の指定も検討された。
大波地区の稲作農家は154戸あり、今年は、計約142.6トンが生産された。
しかし、一般消費者には出回っていない。県の調査では、70袋(約2.1トン)が福島市と同県伊達市の米穀店に卸されたが、店に保有されたままだった。残りは農家が自家用として保有していたり、販売委託先のJA新ふくしまが保管したりしていた。

★基準値超え発覚のいきさつは?
大波地区の農家が今年収穫したコメをJA新ふくしま(福島市)に持ち込み、「家族が食べるから安心したい」と自主検査を依頼したのがきっかけだった。

★出荷停止の解除は出せるのか?
出荷停止の解除について、政府は検査で安全が確認された農家や集落ごとに検討する考えを示している。
農水省幹部は「規制値超えが広がっている現状で解除の議論に入るのは難しいが、安全が確認されたコメまでも出荷を認めないのかという議論もある。県の検査の推移を見ながら検討するしかない」と語った。

★その後の経緯と今後の対策
福島県は、11月18日、福島市大波地区のコメ農家全戸を対象にした検査を実施。
最初の4戸すべてで不検出か基準を大きく下回ったと発表した。
県は、同地区のほか、10月までの本検査で一定水準以上の値が検出された他地域のコメ、今回の水田と地形が似た田のコメについて再検査を進める方針。
県によると、4戸のうち2戸は不検出、2戸は1kg当たり11ベクレルと22ベクレルだった。

さらに県は、18日までに、大波地区の全154戸のうち146戸から流通状況の聞き取りを終えた。
計70袋(約2トン)は福島市と伊達市の米穀店に販売されていたが、店から消費者には売られていないことを確認した。
それ以外のコメはJAや自宅で保管したり、親類に配ったりしたという。
大波地区の稲作農家154戸のうち、11月24日時点で調査が終わったのは34戸。
さらに県は伊達市などにも調査を拡大する方針で、今後も基準値を超えるコメが出る可能性はある。


★地元では
大波地区では11月18日、JA新ふくしまが緊急の説明会を開き、地元の農家約100人が集まった。
JAは販売や譲渡、摂取を控えてそのまま保管することなどを農家に要請した。
県の担当者は「申し訳ないでは済まされない事態。できることを最大限していく」と謝罪。
福島市の担当者は「検査に問題があったと言わざるを得ない」と国や県の検査の進め方を批判した。
農家からは「米作りに命をかけてきた。何も悪いことをしていない」と怒りの声があがり、国や東京電力による買い上げや補償、全袋検査などの要望が相次いだ。
JAは大波地区だけでなく、管内の福島市の他地区と福島県川俣町の農家3千戸余のコメを独自に調べることにした。



【コメ汚染問題の本質:検査体制に突きつけられた疑問符】

福島県は、「現実的に全量を調査するのは困難。県内で今年収穫されたコメは約35万3600トンあり、30キロ袋の換算で1180万袋になる。
仮に1日4千袋を検査しても、8年ほどかかる計算です」として、全量検査を否定した。
だが、国が定めた検査体制の“外側”で汚染コメが発見されたことで、検査の有効性そのものが揺らぎかねない事態となってしまった。

そもそも、今回の検査体制には、当初から“穴”が多いとの指摘が多かった。
順を追って説明する。

(1)具体的にどこを調査するかは、最終的には市町村や現地農協関係者が決めていたという点
福島県では、各市町村に対して文部科学省が作成した空間放射線量の分布図に従い、最も高い地点で測定するように依頼していたという。
だが、仕組みの上では、より低い点での計測をしようとすればそれができてしまう体制にあった。

(2)調査ポイントが少なすぎるという点
重点調査地域ですら、検査地点の数は15ヘクタールに2地点だった。甲子園球場5個分に相当する広さの中から2点は少なすぎるのではないか、という意見は強かった。

(3)想定外の汚染経路を見逃していたという点
さらに厄介なことに、今回、当初想定以外の汚染経路の可能性もでてきた。
これまで前提とされていたのは、原発事故直後に田に落ちた放射性物質による土壌からの汚染が主だった。
しかし、今回、基準越えセシウムが検出された農家の畑は、山から水が流れ込む位置にあり「山の木の葉に付着したセシウムが落葉とともに水田に流れ込んだ可能性が強いのではないか」と宮崎毅・東京大学教授は指摘する。

そもそも、田には収穫前に水を抜かれるまで水が張られている。
ここに山の湧き水や上流の用水路からの水の流入などが起こり、ホットスポットが発生する可能性は高いといえる。
本来であれば、こうした可能性を考慮に入れ、専門家の知見を入れて検査地点の決定や、ホットスポット化する危険性のある箇所の重点調査などを行うべきではなかったのか。

福島県の農家の被害は深刻である。
今回出荷停止となった大波地区以外のコメですら、市場から買い手がつかず農協の倉庫から全く動いていない状況。エサ米としてすら売れない。
福島県は大波地区の収穫米について全袋調査を行うほか、伊達市など4市12地区で一戸一袋を調べるなど追加調査を行うことを決めた。

検査体制を策定した農水省の見通しの甘さは問われてしかるべきである。
鹿野道彦農水相は検査体制の見直しについて「厚生労働省や福島県と協議する」と表明するにとどめた。
しかし、コメ検査体制への信頼は根本から崩れかけている。
国として抜本的な体制見直しは必須であろう。



 
【コメ汚染問題の本質:もう一つの見方】

コメ騒動に続いて、粉ミルクからも放射性セシウムが検出されたとして、騒ぎになっている。
こちらは基準値以下であったが、メーカーが自主的に公表し、回収すると発表した。
これら一連の報道から、基準値うんぬんより、放射性物質がわずかでも見つかれば、その食品はアウトという風潮が出来上がりつつあると言える。
粉ミルクメーカーの過剰気味の反応も、この標的にされることを恐れてのことであろう。

原発事故を受け、反原発を掲げる団体は勢いづき、反対を唱える有名人、芸能人も増えている。
反対派の学識経験者などはヒーローになった感があり、TVでその顔を見かける日も多くなった。
それ自体を悪いとはいえないし、個人・団体の活動は自由である。
しかし、これらの団体、個人の主張の根底にあるのは、「放射線悪玉論」である。
わずかな放射線でも人体に悪影響があり、将来ガンになる確率が増えると信じ、そう主張している。
これらの主張に住民団体などの圧力が加わり、政府、自治体とも押されている感がある。
ガレキ処理の引き受け反対の圧力などはその典型的な現れであろう。

だが、どんな主張をしようが政策を取ろうが、放射性物質を含んだ食品、ガレキが減るわけではない。
むしろ、規制値を厳しくすればするほど、出荷出来ないコメなどが増えるだけである。
今までの規制値でガン患者が増えたという臨床例もなく、科学的根拠も乏しいのに、政策を曲げるということは、農家やメーカーを苦境に追い込むだけではないだろうか。
しかし、すでに風評は広がり、何も問題がない農家のコメすら「福島県産」というだけで売れないという現実がある。
政府、自治体は、風評被害を抑える義務があり、加担するような政策を取るべきではないと思うのだが。



 
【放射線は、微量でも有害という主張】

かなり前から、有害論を主張する論調はあった。
例えば、ハンフォードの核施設で働いていた約3万5000人の労働者を10年間にわたって調査してきたピッツバーグ大のマンクーゾ博士たちの主張はこうである。

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「低線量被曝とガン発生の間には明らかな因果関係がある。
ガン発生の「倍加線量」は従来の値よりも二ケタないし三ケタ低い」と発表。
マンクーゾは、各施設で働いていた人のガン死者のうち、少なくとも6~7%の人は放射線被爆の結果ガンにかかって死亡したという結論を発表している(臨床例ではない)。
この結果、許容線量よりはるかに低線量の領域で、放射線がガンを誘発することを示唆している。
(教授の主張は、次号で詳しく解説する予定です)
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また、核施設の多いニューヨーク州では、ガン発生率が他の州より多い(男性2・5倍、女性4・2倍)と主張するバーテル博士のような人もいる(真偽は不明)。

日本でも、1980年代には、原発で働く労働者の放射線被曝を問題視した「原発ジプシー」や「被曝日記」などが刊行され、様々な証言も掲載されている。

また、市川定夫埼玉大教授(原水禁副議長でもあった人)のムラサキツユクサによる環境放射能の話も有名である。
浜岡原発の周辺に植えたムラサキツユクサの雄しべの毛の突然変異を観測し、周辺の放射能が中部電力の発表(線量目標値年間5ミリレム以下)を上回っていることをつきとめたというものである。
この結果、原発推進側の発表する数値は信頼できるものではなく、放射能の環境汚染は確実に進んでいると教授らは主張している。




【厚労省、これまでの見解を改定】

小宮山洋子厚生労働相は11月28日の記者会見で、食品に含まれる放射性物質の新基準をつくるにあたり、算定根拠となる年間の被曝(ひばく)許容量について、
「放射性セシウムは年間1ミリシーベルトを基本に検討する」と発表。
現在のセシウムの暫定基準は年間5ミリシーベルトなので、5倍の厳しさになる。
理由として、

(1)食品の国際規格を決めるコーデックス委員会が年間1ミリシーベルトを超えないよう食品の基準を設定している

(2)食品の放射性物質の検査数値が低下傾向である――などを挙げた。
年明けまでに食品ごとの基準値案をまとめ、文部科学省の審議会などに意見を聞いた上で、来年4月に施行する方針。

もう少し詳しくこのことを解説する。

大臣発表の前日、食品からの被曝(ひばく)による影響を検討していた食品安全委員会は、「健康影響が見いだされるのは、生涯の累積でおおよそ100ミリシーベルト以上」とする評価をまとめ、小宮山大臣に答申した。

「生涯累積100ミリシーベルト」(自然放射線などを除く値で)は、新たな正式基準をつくる根拠になる。

これまで同委員会は、食品だけでなく環境からの外部被曝も含めて100ミリシーベルトだと説明してきた。

しかし、これまでの説明を訂正。
外部被曝は所管外だとして、「外部被曝がほとんどなく、汚染された食品からだけ被曝する状態」を前提にして考えた値だと解説。
さらに、「内部と外部の合計ではない」と述べ、食品による内部被曝だけで100ミリシーベルトという意味だと強調した。

しかし、福島県など外部の放射線量が高い地域は現実にある。
外部被曝分をどう考えるのかという問題に対しては、厚労省などに判断を委ねる意向を示した。

厚労省は、福島第一原発事故による放射性物質を含んだ食品を1年間摂取した場合の被曝線量を、全年齢平均で約0.1ミリシーベルトと推計している。
これだと、このままの状態で0歳児が100歳まで生きたとしても、生涯10ミリシーベルト程度という計算になる。

従来の暫定基準は、食品からの被曝を放射性物質全体で年間17ミリシーベルトを超えないようにするという大枠で1kgあたりの値を算出してきた。
放射性セシウムなら野菜や肉類で1kgあたり500ベクレルという値はこうして決められ、この物差しで農水産物の出荷停止措置がとられた。

ICRP(国際放射線防護委員会)の換算式によると、成人が1kgあたり500ベクレルのセシウム137を含む食品を200グラム×365日食べ続けると、内部被曝は約0.5ミリシーベルトに相当する。
たいした値ではない。
これを5倍厳しくする理由は乏しい。

小宮山厚労相は新基準について「安全性を確保する必要があり、(今の暫定基準よりも)厳しくなる」との見通しを示した。
ただ簡単な話ではない。
生涯累積なので年齢によっても差が出る。
具体的検討はこれからで、4月のタイムリミットは守れそうにない。

以下に、現在の基準値を掲げます。

 
 
【放射線の危険度とは】

マンクーゾ博士の主張やムラサキツユクサの話には、たしかに一定の説得力がある。
しかし、主張が一面的すぎることと、最初から「放射線は微量とはいえ危険なもの」という結論を出して研究してきた経緯がある。
彼らは「推進派は、推進するという結論を先に出して都合のよいことだけを取り上げている」と言うが、反対側から見れば、彼らの主張もまた同義の一方的推論である。
だから議論は常に平行線となる。

「原発ジプシー」の話なども誇張され過ぎている。
私は、実際に原発内で仕事をしていて、彼らと接してきたので、その実態は肌で知っている。
彼らの中には、自分が浴びた放射線量を自慢し合っている者もいたし、多くは無頓着であった。
私が放射線の人体に対する影響の話をしても、「オレは、これまで一杯浴びたけど、なんともないよ」とか「気にしないっすよ」とか言って、取り合おうとしない者が大半であった。
また、マンクーゾたちの研究は、あくまでも「公式」に記録された被曝線量を基にしたものである。
しかし、私の知る限り、実際には、浴びた線量を記録しなかったり、線量計やフィルムバッチを外して入ったりということがかなり行われていた。前にも述べたように、私自身もそうだった。
そのような非公式の記録(つかみようもないのだが・・)を入れたら結果は変わるのではないのか。
実際、私自身を含めて、知る限りの範囲において障害が出た者はいない。

私は自身の被曝体験から、現在報道されている放射性物質の発見量程度では一般人の健康被害は出ないと断言しています。
いたずらにおびえて暮らすストレスのほうがよほど大きいと思います。



【放射線の危険度とは:ICRPの勧告】

ICRP(国際放射線防護委員会)では、低線量において直線反応があると仮定すると(つまり、しきい値(これ以下は症状が出ないという限界値)なしとする)、過剰のがんと遺伝的影響による損害は、1990年勧告に引き続き1シーベルト当たり約5%としている。1ミリシーベルトだと、0.005%となる。
この推定値に含めた固形がんに対する線量・線量率効果係数(DDREF)の使用における値は、1990年勧告に引き続き2としている。
また、がん以外の疾患におけるデータについては、リスクに関する情報を提供するには不十分であると判断している。
急性障害に関しては「しきい値」があるとして、影響は器官や年齢などによって異なるが、100ミリシーベルト以下では症状は出ないとされている。
このように、急性障害に対しては「しきい値」があるが、低放射線を浴び続けそれが蓄積されることによって生じる晩発障害については「しきい値」がないとするのがICRP(国際放射線防護委員会)の現在の基準である。



【放射線の危険度とは:放射線と生体細胞】

低レベルでも放射線によって細胞の遺伝子が傷つき、被曝量に応じて将来の癌や白血病、遺伝的障害が生じるおそれは確かにある。
私自身も、電離放射線検査では、赤血球の減少、白血球の増加という現象が出た。
この点においては、反原発派の主張と見解は同じである。
しかし、生体細胞には自己修復機能が備わっていて、微細な傷は自分で修復してしまうことも事実である。放射線による傷も例外ではなく、ほとんどが修復されてしまう。
私の血液も、半年ぐらいで元の数値に戻った。

また、傷の修復で細胞が前より強化されることもある。
これがホルミシス効果と呼ばれているもので、宇宙飛行士たちの調査・研究で知られる米国のラッキー博士が発表したものである。
ICRP(国際放射線防護委員会)の部会でもホルミシス効果は一定の支持を得たが、勧告案に盛り込むことは見送られた。それまでの見解の否定になりかねないというのが主な理由である。

また、生体には、もともと欠陥がある細胞を、傷ついたことを契機に切り離してしまう
機能(自爆機能)がある。
これも広義にはホルミシス効果といえると思う。
これを人為的に促進するのが放射線治療であるから、効果は実証されているわけである。

さらに、人体は、自分の体の中に存在していないものは全て異物として捉え、排撃しようとする。
放射性物質もしかりで、取り込んでも多くは早期に外に排出されてしまう。
ただ、一部の物質(ヨウ素、セシウム、ストロンチウムなど)は、特定の部位に張り付く性質をもっているため、危険視されているわけである(甲状腺、生殖器、骨髄など)。
それでも無制限に蓄積されるわけではなく、時間の経過とともに体外に排出されていく。



【日本産科婦人学会】

学会として、「5万マイクロシーベルト(50ミリシーベルト)までは胎児に影響は出ない」と発表している。
つまり、妊娠されている女性が50ミリシーベルト以下の被曝をしても、胎児には何の影響は出ないということである。
福島第一原発の事故においては、周辺5km以内を含めて、50ミリシーベルト以上浴びた妊婦の方はいないと報告されている。



【放射線による遺伝子への影響】

今回の事故で、放射線による遺伝子への影響を懸念する向きもあるが、大分県立看護科学大学環境保健学研究室の甲斐倫明教授は、「学術的には、遺伝的な影響は証明されていない」という。
「人間の遺伝への影響については、広島・長崎の原爆被害を調査する限り、結論は出ていません。
ある程度の放射線が当たると、精子に傷がつき、遺伝的な影響を与える可能性はあります。
しかし、それが直接の原因で先天的な障害をもった子供が生まれるといったことはいまのところないんです。
放射線の影響はあるかもしれないが、それ以前に生活習慣や飲酒・喫煙の問題の方が強く作用するということなんでしょう」
広島・長崎では、被爆二世とか三世とか呼んで、あたかも遺伝的影響があるかのように喧伝されているが、そのような症例は出ていない。
これも風評被害ということである。

古くは、アメリカのノーベル賞受賞者ライナス・ポーリングが、「核実験でつくられた放射性物質が人類に大きな遺伝子的損失をもたらす」と主張し、アメリカの原子力委員会(AEC)の核実験を強く批判していた。核実験に対する反対には同調するが、遺伝的損失には根拠も症例もない。

結局のところ、低レベル放射線の影響はあるが、細胞の修復能力がある限り、その傷は修復され、
大半の場合、障害は出ないということらしい。
問題は、細胞の修復能力と放射線で傷つく程度の綱引きということになりますね。その値を100ミリシーベルトと置くか、20ミリ、5ミリ.あるいは1ミリシーベルトと置くかなんですね。
次回も、この続きを送りたいと思います。