建設産業への提言 2013 「建設投資を改めて考える」

2013.01.08

安倍首相が掲げる200兆円国土強靭化計画。
長く暗いトンネルを走ってきた建設産業にようやく指してきた薄日と言えるかもしれません。
しかし、業界紙などを見ると、慎重論が大勢を占めています。
これが一般マスコミとなると、否定的意見のほうが多くなります。
「バラマキの復活」
これが、新聞、TVなどの大手マスコミの論調です。
Netマスコミとなると、もっと露骨に「利権復活」と、非難一色です。

誤解と偏見に満ちていると反論したくなるでしょうが、
業界紙も、これらの声を無視できなくなっているのです。
それが、国土強靭化計画を手放しで歓迎できない背景にあるのです。

建設産業は、人々の生活や企業活動を支える「形あるインフラ」を造る産業です。
財務諸表でいうところの「損益計算書」ではなく、「貸借対照表」の産業です。
これが、今ひとつ国民の関心を呼ばない理由です。

企業においても、関心は「貸借対照表」より「損益計算書」に行き勝ちです。
「売上は?」、「利益は?」の話にはピンと来ても、
「総資産は?」、「流動比率は?」の話には、いまいちピンと来ないのではありませんか。

つまり、国民も同じなのです。
「貸借勘定」に分類される建設投資は、どうもピンと来ないのです。
笹子トンネルの崩落事故をきっかけに、インフラの老朽化が叫ばれても、
みな、「自分が通るときは、まさか落ちはしないだろう」とタカをくくるのです。
3.11の大震災にしても、被災地以外は、急速に健忘症気味です。
ゆえに、国土強靭化計画に対する国民の期待はほとんど聞かれないのです。

企業において、自社のインフラ強化に対する投資はトップ判断の領域です。
これを社員に丸投げする企業トップが多いのが問題です。
少なくとも投資の是非の判断ぐらいはトップがすべきです。
そんな企業経営者が、「国土強靭化計画は首相がリーダーシップを」と言うのは、
矛盾ではありませんか。

平成25年1月
株式会社ハルシステム設計